剣鉈=Ken-Nata

2003/07/30


剣鉈とは 字の通り鉈とナイフの混合型の和式鍛造(打ち)刃物のことである。主な産地は高知と福井県であるが どちらかというと高知(土佐)がナイフ寄りで福井(越前)が鉈寄りの印象を受ける。他にもグーグルで検索すると日本全国に「打ち刃物」「和式鍛造」という冠詞が付いた刃物が色々有る。洋式ナイフとの差異は柔らかい鉄(地鉄)を土台にして そこに鋼を抱かせる(割り込んだり 貼り付けたり)つまり硬度の異なる複合材を用いている。鋼の部分が炭素鋼であるが軟鉄の部分をステンレスに置き換えた物も存在する。下図を参照して欲しい。

打ち刃物=和式鍛造刃物の定義は成書により一定しない。私的な考えを書くと以下の様になる。

「柔らかい地金(軟鉄)に炭素鋼を抱かせたり 薄く張り合わせたりして作られる刃物」

「刃物鍛冶の長年の経験と培った技術や勘 美的センスによって生み出される実用的芸術品である」

「手入れをしないと錆びるし、研いで使い鈍ったら研ぐもの」

「外国産カスタムナイフのような華やかだが馬鹿馬鹿しい価格に比べて地味に見えるが廉価で良く切れる」

だいたいラブレスナイフに300万とかってのは仕方がないと思うが(ナイフ界の手塚治虫だし)その単なるコピーに100万とか50万って.....そりゃあカスタムには設備投資がかかるし手間だって大変ですよ。そりゃあ判るけど程度問題だと思う。ファクトリーメイドのラブレスレプリカで私は構わないし 同じ金額なら絶対に和式鍛造刃物を選ぶ。

この趣味に走ってからつくづく感じるが「鉄って美しい」と感じる。

我々の祖先、古墳時代の日本人達は青銅の金色(鋳造直後は金色である。古墳から出土時は緑青まみれ状態)を見慣れた眼で鈍い銀色に輝く鉄を見た時どう感じただろう。ちょっとロマンを感じる。

鍛造刃物の作り方は色々なナイフショップに詳細が出ているので参照して下さい。※例えば「ここ」(トヨクニさんのサイト)

鉄には炭素を多く含む「鋼」(ハガネ)これは硬く焼き入れで更に硬くすることが出来る。硬いが脆い性質が有る。これに対し軟鉄(炭素を殆ど含まない)は焼き入れが出来ないが粘りが有り可塑性に富む。古来日本には「たたら製鉄」という比較的低温で作られた鉄があり その中でも特に特に最上級のものを「玉鋼」(たまはがね)と呼び日本刀に用いられているので有名である。

写真は「たたら炉」で砂鉄を吹いて作られた「ケラ」である。この大きさで252g。流石に鉄で かなり重い。原料は「砂鉄」で松炭を使い1500度程度の温度で半固形の状態で炉内で育つ。現在「玉鋼」いや「たたら製鉄」は島根県や高知県などの一部で行われているが大変に手間がかかり専門的知識を必要とするため希少であり とても高価である。

※たたら製鉄については光永信一「たたら製鉄」に詳しい。ISBN4-86069-051-6税込1680円 吉備人出版

我々が手にする鍛造刃物(打ち刃物)に使われている鋼は「安来鋼」という日立製鉄安来工場で作られた特殊鋼である。大雑把に硬い順番でいけば「スーパー青紙」「青紙」「白紙」「黄紙」となるが 硬ければ良いというわけではなく研ぎにくくなる。和式鍛造刃物は錆びやすい為 研げなければいけない。尚、「紙」の色は工場から出荷する時に目印に貼付する紙の色が通称になったもの。下記の中に出てくる「多層綱」「ダマスカス綱」というのは、鉄を鍛える時に 平たく延ばした鉄板を何度も何度も折り返し叩き伸ばした痕が層状になった(幾何学模様のも有る)素材の事である。古来「墨流し技法」と呼ばれていたが、染色業界が先に意匠登録しており この名前が使えないのである。ダマスカス綱は製造法が全く違うがネット上では混用されている。

職人さんの腕の見せ所は 原材料の鋼の焼き入れや地金の選択 鍛接の技術など総合的なものである。デザインも自ら行うのが普通で これはセンスも非常に重要である。単なる鍛冶屋さんでは生き残れないのです。特に「焼き入れ」は和式刃物の最も重要なポイントで、秘伝や家伝その他諸々 単一材製の洋式ナイフでは考えられない経験や修業、勘、等文字では表せないサムシングが存在する。焼き戻しにも同じく手間がかかる。カスタムナイフとかいうステンレス板を500万出して買うなら日本刀を買うよなあ、と。

剣鉈は「鉈」だが日本刀の切っ先のように先端がとがっている。殆どは両刃で大型ナイフに必要な切れ味と対衝撃性があり しかも研ぎ直しが容易である反面 どうしても錆びやすいのが欠点である。昔の鉈は大抵両刃だったのだが最近ホームセンターで見かける「角鉈」は片刃ばかりで、いつからああなったのか?枝を落とす時は下からコンと叩いておいてから上を「ドン」と叩くんだけど、片刃じゃ持ち替えないと駄目だから面倒なんですがね。食い込みだけは片刃が良いけど 包丁じゃあるまいし。ま 元に戻って、下の写真は私が集めた剣鉈達で クリックして貰うと拡大像になる。主に作者の個性が好きで集めたので偏りが有るが御勘弁下さい。



佐治武士 成書によると1947年福井県武生市に生まれ700年の伝統を持つ越前打ち刃物の伝統を守る刃物鍛冶三代目。切れ味優れた強靱な鉈を得意とし伝統に裏付けられた作風と信頼性が高く評価され若干44歳で通産大臣から「伝統工芸師」に認定される。またナイフの世界にも親しみ和洋折衷の鍛造カスタムメーカーとして海外にもその名前は知られている。(となっている)

佐治武士氏のプロフィ−ル
佐治武士(佐治武士) 昭和23年武生市生まれ、中学卒業後、武生にある鍛冶訓練校に入り3年間基礎をみっちり学び、卒業後は父春吉を師と定め、実家の工場へ下りる。 佐治武士は二十代で既に鍛冶の本場武生で頭角を表し、それだけに師であり父でもある春吉氏の期待も大きかったことが想像される。 30歳になった日に師の父から「おまえに教えることはもうない」と言われ、その日を境に厳格この上なかった師の父は、武士氏の仕事に一切口を出すことはなくなった。 鍛冶訓練校に入学から教えて15年にして師に一人前と認められる。 現在も鍛冶に励むかたわら鍛造刃物の普及・啓蒙に熱心で「刃物造り体験スクール」なども開催している。国の伝統工芸士 。

私は他に「武生ナイフビレッジ」等の組織力や伝統に縛られない自由なデザインや素材の選び方。「多層綱」をメジャーな素材として認知させたのも佐治氏のおかげだと思う。それまでは「墨流し」技法と呼ばれ一部数奇者の選ぶ材質だったが 現在はどこもかしこも多層綱、という有り様である。流行らせたのは多分佐治氏と当代晶之氏だと思う。世間が多層綱だらけになると今度は「有色ダマスカス」というカラー素材の多層綱を使うなどユニークな心意気が好きである。根本的に「ダマスカス綱」はルツボの中で溶けた金属が冷える時に出来る模様が有るもので 多層綱は二種類以上の性質の違う鉄を重ね合わせ叩き伸ばし折り曲げまた重ねて叩き、を繰り返して作るもの。最近混同されまくってるが和式鍛造の場合は多層綱が殆どである。

それから「利器材」(利器材=割り込みや三枚、付け鋼などの鍛冶の技法による複合鋼を工業的に大量生産した鋼材。安価、安定した品質、手での鍛造では付ける事ができない特殊鋼も組み合わせられるなどの利点がある。)この使用について、私は基本的に どっちがエライという事は無いという立場である。大事なのは鍛造と熱処理であって、そこがしっかりしてれば 鍛接工程は自家作業でなくても性能に差は無い (もちろん接合材メーカーの作業品質が信頼に足るものであることは大前提) 。店によってコダワリが有り利器材をボロクソに貶す店も有る。それなら「青紙」や「青紙スーパー」という大量生産品を使用せず 真砂鉄と松炭を使い床釣りを造りタタラ炉を築き高殿を建て天秤フイゴを踏み三日三晩かけてケラを育ててから罵るが良かろう。昔からの伝統を守ると声高に言うなら 明治初年までは日本各地で見られた「タタラ製鉄」をさっさと忘れて「古からの伝統」とは片腹痛い。鋼部分に大量生産の物を用いておきながら地金の部分が自家鍛接だからエライ、と威張り高価な価格を付けるのは勝手だが そこまでユーザーはバカではない。
 以下重量は「鞘無し」で計っています。

弁慶300mm:全長470mm.刃長300mm.刃厚6.5mm.刃巾42mm.刃材白紙多層綱.柄+鞘材=ニシキヘビ皮巻き+藤巻き.とにかく「大きい」実用というより「装飾用」である。刃先の跳ね上がった形状といい飾るには最高。勿体なくて枝打ちとかに使えないのが難点。バフ無しなのだがグラインダ痕が目立つ。個体差なのかな?最近の佐治武士工房のものは このグラインダ痕が目立つのが多くなっている。荒れたのでなければ良いが。このニシキヘビ皮張りの鞘を腰に下げて、というシチュエーションが想像できない。というか似合う格好が想像外である。買っておいて言うのも何だが うーん難しい。

宝刀ボーイ・スタッグ全長390mm.刃長240mm.ブレード材有色多層綱.ハンドル材鹿角.革シース。この「有色多層綱」というのが好きで この材質をブレードに用いたのを集中的にコレクションした。宝刀越前守も同じ理由で購入。佐治武士氏しか使っていない材質である。写真がうまく撮れないが三色が渾然一体となり美しい模様をなしている。有色多層綱は派手だのと言うヒトもいるが単なる鉄には無い面白さ 景色が有って宜しい。個体によって景色が違い 保有する中では宝刀ハンターの物が一番好きである。スタッグは洋式ナイフではポピュラーだが和式では珍しい。ヒルトが真鍮製でスタッグとの間に隙間が無い。チョイルは この長さと巾が使いやすい。個人的にはボーイナイフには刃先に明瞭なスウェッジが欲しかった。これは刺突性の問題ではなくスタイルとして「ボウイナイフ」は ぐいっと抉れたスウェッジが定番だからである。


では、本物のボウイナイフはどのような物なのか典型例の写真を見て下さい。モノは

BUCK#916MT Bowie ELKホーン限定品(100本限定=No58)

刃材:420HC 柄材:エルク(ヘラ鹿の角)全長314mm 刃長182mm 刃巾40mm 刃厚4.5mm 重量345g

ボウイナイフ (Bowie knife) は、ナイフの一種で、刃長20〜30cmのクリップポイント、しっかりしたダブルヒルトの大型シースナイフ。西部開拓時代に殺人用の武器と作業用の道具を兼ねて盛んに使われた。正確な定義は大型のダガータイプを含め諸説がある。ハンティング・ナイフの原型で元は欧州で使われていたブッチャー(屠殺用)ナイフを改造したのが始まりという。西部開拓時代の英雄、アーカンサスの開拓者でディビー・クロケットらと共にアラモに散った、ジム・ボウイが決闘やバッファロー狩りに愛用していたと言われている。現在のフィールド、まして街中ではそれほどの実用性はないが、アメリカでは今も盛んに作られ愛用されている。

この先端の刃の独特の「えぐり」をスウェッジと呼ぶ訳です。刺突性を上げる為に普通のナイフより長く抉ってあります。4枚目に同じBUCK社の120ジェネラルを並べましたが こちらはマルチパーパスのファイティング寄りというスタンスで ファイティング専用のボウイナイフとは見た目が これだけ違います。他にもヒルト(鍔)が指を守る為に上下に大きく張り出し 刃巾も折れないように大きく取ってあります。和式ナイフで「ボウイナイフ」を名乗っているモノが如何に違うものか一目で判ると思います。この#916MT Bowieは今どきのBUCK社にしては珍しいフル・タング構造です。三枚目に58/100という数字が読めるかな??限定品の印です(^.^) これはマルオクネットで御世話になりました。


ボーイ240有色クラウン仕様:全長385mm.刃長240mm.身厚6.5mm.刃巾40mm

名称で有色多層綱と勘違いしそうだが こちらはハンドル材の鹿角(根元の部分をクラウンと呼ぶ)に着色仕上を施した、という意味。.革シース。こちらは多層綱の色無し版。鹿角の根元の太い部分は握りにくそうに見えるが これが不思議に握りやすい。シースがオリジナルより黒ずんでいるのはミンクオイルを染み込ませた所為である。こうしておくと錆の発生を大分抑えられる。上述のチョイルだが一見同じように見えるが こちらの方が低く狭い。ほんの少しの差で損をしている。鹿角を使う場合はファスニング(ファスナー)・ボルトは丸出しで見える場所だし、一回り太い 出来れば目立つ材質の物を使用した方が良いと思う。

宝刀ハンター240mm:全長380mm.刃長240mm.重量400g.ブレード材青紙有色多層綱.ハンドル樫&革紐巻き.シリーズ最初の作品。また所有する有色多層綱材の作品中では最も模様が奇麗な逸品である。色々重ねて鍛接する鉄材だろうから 完全に交じり合っても駄目だろうし 材料のどの部分をどう使うか、等難しいんだろうなあと思う。これは「ナイフショップ マルキン」で購入。このタイプのチョイルは上記二者の中間サイズである。革紐巻きの為手が滑らず この形状と高さが使いやすい。長さも実用に使うなら240mmまでだと思う。300mmになるとバランスが悪くなる。勿論コレクションには欲しいサイズだが。

黒武者300mm:全長450mm.刃長300mm.刃厚6.5mm.刃巾45mm.重量580g.ハンドルに鮫皮が巻いてある。ブレード材白紙多層綱.黒塗.これは まだ収集癖の無い頃にバイクツーリングに持参する為購入。深夜無人で真っ暗な北海道奥地のキャンプ場で恐ろしい思いをした為、何か武器をと思い購入。だからスレが目立つんです。幾ら何でもヒグマと闘う気は無いですが やられっ放しじゃあ嫌だし。柄が長い為両手保持が利き それなりに心強かったですが キャンプ場でネギまで刻みました。白樺の枯れ木を叩き切って薪木にしたし こいつをマルチパーパスにしたのは私くらいかも?カッティングエッジ周辺の傷は戦歴のようなもの。大型ナイフの研摩(砥石掛け)もこれで覚えたというものです。いやー勿体ない物で入門したものです。

黒備(くろそなえ):ブレード白紙多層綱黒塗 刃長140mm(実測145mm)刃巾30mm.刃厚5mm.全長250mm.柄材=樫に鮫皮黒塗、木鞘。何より 此れ位の大きさが最も汎用性が有ります。刃先の付け方が急峻で刺し身もおろせます。この相方に「赤備え」というのが有りますがどうしようかなあ(^.^)買おうかなあ、と迷ってます。いつも購入する時に考えるのだが、皮バンド(木鞘に装着する皮ベルト)が駄目というのか工夫が無いメーカーが多い。今どきヒモで済ませるのは時代に合わないと思う。Gパンのベルトに下げるのだから異常に細かったり太かったりは使いにくい。黒備の大きさと このベルト巾は「正しい」と思う。良く出来た作品だと思います。いつも感心するのですが 佐治氏の作品は木鞘の造りがシンプルだが非常にピタリと決まる。緩く無し かといってきつくなく、刃を収めると完全に入りきる前に少しきつくなりパチっという感じで収まる。逆さにしても抜けない。意外に難しいと見た。

木鞘用革バンドは「マルキン」で販売している事があります。WEBには掲載していませんので要問合せ。

:(ミガキ)全長215mm.刃長105mm.両刃.ブレード材白紙多層綱.シース+柄=竹製.西陣織の袋が付属。

何か「和式」に拘って日本製の材質を集中的に使ってます。持ちやすいのですが 有色漆で塗った鞘の部分は はっきり言って感心しない出来。半端に塗るのだったら塗らないほうが良い。竹は成程越前が有名(水上勉の小説参照)だが 漆は越前ではなく隣の石川県能登の輪島に任せた方が良い。錦の袋なんて不要。それなら本体のヒモを組み紐(福井は名産でしょう?)にしたほうが艶っぽかった筈。どうも全体から「スーベニールショップでアメリカ人観光客が喜んで買う」という図式が浮かんできます。刃物として切れ味は良いが 「使いにくい」。現在デスクナイフとして目の前に置いてあるので 矯めつ眇めつしてみるが やっぱりこの漆塗りは納得がいかない。刃はもう少し長い方が良いし ハンドルが軽すぎる。四枚目の写真で鞘の向かって左側に微かに飛び出しているのが 竹ヒゴの巻き始め部分で、鞘の上下を間違うと戻す時に自らの刃でここを切断しそうになる。発想は面白いと思うが どうも納得のいかないのが「侍」である。ここまで作ったら「道中差」を現代風に復刻してみては如何?これ以外にも妙に「外国人が見た変な日本」風の作品が有るが どれも?ではある。


土居良明(どい よしあき):昭和13年生まれ、18歳から鍛冶修業を始め土佐周辺の鍛冶場を10年間修業する。あえて一人の師匠に師事するのを避けた。土佐山田に鍛冶場を整え独立したのは昭和43年で30歳。「渓流鉈」「小猪刀」(こいのとう)「渓流小刀」「百錬小鬼手」(ひゃくれんこおんで)は有名である。佐治武士氏と比べたりしたら申し訳ないが、派手さは無いが質実剛健で私は とても好きなのです。

細身剣鉈 7寸血抜きなし。全長365mm.刃長210mm.ブレード材白紙二号割込.ハンドル樫材塗り柄。チョイルが長く指を切る心配が無い。鞘もちゃんと刃の形状に合わせて上から見ると三角形に見える。この血抜き無しのタイプは案外見かけない。刃が長いのだが細いためバランスが非常に良い。

狩猟刀:試作品(宗正刃物棚卸で入手)5寸.全長270mm.刃長150mm.重量200g.ブレード材白紙二号。これは宗正刃物の棚卸し企画で試作品として氏が提供した物を譲り受けた。つまり世界に一本しかないものである。何となく刃付けのせいでカッティングエッジ以下のブレードが凹んでいるように見えるが スケールを当てると真っ直ぐなのである。刃付けのせいか?と思うが大事に仕舞ってある為多分永久に判らない。

和式ククリ9寸5分・両刃.全長440mm.刃長290mm.刃厚6.5mm.重量510g.刀身日立安来綱青紙2号.地金極軟鋼.ハンドルタコ糸巻きに柿渋、特殊樹脂塗布.鞘 朴にオイルステイン染、銅巻きこれはもう数奇者なら御存知の宗正刃物企画で氏が作成した「グルカククリを和式鍛造刃物で作ると」という恐ろしい代物である。9寸5分は最も大きいサイズである。現在も売られている。少し前に第二世代となり「曲がりが弱い」「紐巻きが革紐巻きになった」のだが この後期型はユーザーから好かれず この型を再販し 細くて曲がりの少ないのを「革巻きククリ」として販売している。鞘から抜く時の事を考えると曲がりが少ない方が抜きやすいが曲がってないんじゃククリではないし。

本物指向でベベルストップ部の穴(部族で違う)も再現してある。本物のダンコテもそうだがシースに収めるのが難しい(きついのだ)。切れ味は空恐ろしい。重量バランスもトップヘビーにしてあり どっかに当たったらお終いであろう。ちなみに写真の皮バンドは宗正純正のものである。宗正さんの物にしては ややチャチな印象を受ける。多少高価でも下記のウメガイ用革バンド位の物が欲しい。


四代目晶之(まさの):ネット界では晶之というより「トヨクニ」で有名。伝統刃物の生き字引的存在だった三代目が95歳で亡くなったが 現在4代目の誠氏に その伝統は息づいている。アメリカのセミカスタム、ランドール社と類似の分業体制をとり 高品質 低価格が実現しつつある。

ウメガイ;晶之作 現在販売自粛となった幻のモデル。ダガータイプの形状・刃長が問題になるらしい。カタログが行方不明のため全て実測値。全長305mm.刃厚(真ん中の厚い部分)9.5mm.刃巾最大60mm.刃長ストレート部分170mm.斜め部分が40mm.加えると210mmとなる。重量500g.刃材=青紙スーパー.片方が蛤刃で片方が片刃というダガータイプの双刄の古式剣。天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)型といわれる。現在佐治武士氏作のものが有るが あれより大きい。木鞘は朴ではなくクリの木製で頑丈なもの。色と言い存在感と言い所有する中で最高の刃物であり木鞘である。グリップは樫の木に竹巻。皮バンドは特注の牛皮手縫いでウメガイの重量に耐え得る専用の分厚いもの。所有するコレクションの中で最も好きなものである。

以下「山窩」「ウメガイ」「三角寛」について記す。

この晶之作ウメガイは、幻の漂泊民「サンカ」に伝わっていたウメガイを資料や写真から復元したものである。サンカ社会の研究(資料編)現代書館版(三角寛 原著)の写真では全部で4タイプのウメガイが写っている。その中で作務衣姿の三角寛自身が笑いながら手に持って見せているものが一番晶之作に似ている。サンカの男性が握っているのは もっと薄手の それこそ槍の穂先を折り取った様な大きさと厚みである。小説に「日本刀の折り取った物の峰に刃を付ける」という話が有る。だとすると細身で薄い筈であろう。それに日本刀の残欠を研いでも逆刃には出来ない構造である。三角の小説では大抵懐に入れて持ち歩っている。小説の設定が土台無茶苦茶で 晶之氏作と類似の厚手の物も「サンカ選集第二巻・裾野のサンカ」には出てくる。尤も 主人公の振り回す大形ウメガイは「掟はずれ」(はたむらはずれ)・規格の二倍の長さと書いてある。420mmのウメガイを振り回すわけだ。また氏は「自らの腕をウメガイで肩からスパリと切り落とす」ネタが余程気に入っているのか何遍も小説に繰り返し出てくるが、この厚さでは まず不可能(骨折するだろうが)であろう。それにショックでその場で気絶し出血多量死は免れない。

一時期 日本の漂泊民ブームで三角寛の書籍が古書店価格で一冊何十万もしており とても手が出なかったが今はAmazon.comで原価で買える。一冊2800円で15冊出ている。当時(今から20数年前)多少なりともサンカに興味を抱いた若者たちが唯一のテキストとしたのが田中勝也氏の「サンカ研究」郷土の研究シリーズNo11で 今はこっちの方が入手しにくい。これらに書かれた「ウメガイ」の部分を引用してみる。

「サンカ社会の研究」三角 寛 著(現代書館版)

このウメガイは鋭利な双刄の短刀で、初めのうちは、ウモレ(埋もれ)ガヒ(貝)の、原始的刄物から出た名称とおもっていたが昭和14年9月17日島根県神門川水源の赤名のセブリや昭和17年3月14日鳥取県日野川水源の船通山のセブリで採取したものや その他三ヶ所から採取した資料に依って神代以前はとも角神代以後においてはウメはミゴト(絶妙)のウマシ(見事)で素晴らしい事の表意であり ガイはカヒ(峡)で断ち割りで山をも断ち割るの意だという。すなわち一刀両断の断ち割りを表意した刄物である。これを持っているかいないかで それがサンカであるかないかが判別されるのであって このウメガイはサンカの象徴である。

=旧仮名遣いを少し直しました。以下も同様。

「サンカの社会資料編」のサンカ用語解説集では 

ウメガイ アメノムラクモの剣と同形の双刄のの短刀。ウメはウマシ(見事)ガイは峡(カイ)で断ち割る意。一刀両断に斬る刄物の意。サンカは必ずこれを持っている。言わばサンカの象徴である。

「サンカ研究」田中勝也/翠楊社昭和57年刊初版(重複するところを避ける)

ウメガイの名で呼ばれるサンカ特有の双刄の短刀について三角氏は(以後上記のサンカ用語集を引用)と述べる。後世の単刄の湾曲刀と比べて両刃で直線的なその形態からして上代の刀剣の流れをくんだものであることは明瞭である。「古事記」にはスサノヲが斬り殺したヤマタノオロチの尾から一本の剣を取り出すくだりが書かれている。その剣の名をツムガリの太刀という。「古事記」の異伝にはツムバとするものもあるがツムガリとする伝本が多くツムガリが正伝であると思われる。このツムガリという語から後世トンガリ帽子などのトンガリの語が更にトガルという自動詞が派生したのであろうか。上代の刀剣がウメガイ型のものであったことは、もとより考古学的常識であるがトンガリ帽子やトガルなどの語が表現する形態観念から考えてもツムガリの剣は双刄の直線刀つまりウメガイ型のものであったことが推測される。そして筆者はウメガイの語源はツムガリにあると見る。「ツ」と「リ」がそれぞれ母音化しツムガリ→ウムガイとなりさらにウメガイへと転訛したものであろう。

と語源について書かれている。三角氏の小説では最初の頃は山刄にウメガイとルビを振っている。読んでいて「はて どうだろう」という感じがするが 田中氏の論にも何となく納得しにくい。三角氏の著作にはもう一つ「コベル」という謎の刃物が登場する。どうやら小振りで(12センチ位?)非常に薄くゲートルに巻き込んで(女性は腰巻き上部に!)隠した非常用の刃物のようだが 今のところ正体が判らない。三角以外では1929年「探偵学体系」「自警」江口治=当時警視庁鑑識係長著によると「グドウ」(道具)と記載されているものが三角の言う「コベル」のようである。またサンカの使う刃物は「グドウ」の方を特有の物として書かれている。

まあサンカそのものさえ、三角寛という人物による全くの創作と言い切る学者も居る。全てが創作ではないにしろ どこまでが本当なのか今となっては既に判らなくなってしまった。

それから皆忘れているのかも知れないが三角寛は戦前「ひとのみち教団」(現在のPL教団の前身)の熱烈な信者、今で言う広告塔であり「ひとのみち教団」が当局の弾圧によって壊滅した後は、戦時体制に積極的に賛同/協力した。風見鶏以下の御仁である。昭和17年には「皇国薬草研究所」を創立し「セブリイ」なる人を食った名前のシモヤケの薬(三角寛子氏によるとミカンの皮らしい)を軍に売り込み一財産を作り、当時の刑事警察で山窩の講演をしている。講演の記録が残っているが、官憲相手の講演が「嬉しい」と連発している。戦後になり その所業を憎まれたか小説では生活が立たず「人生座」「文芸座」などの映画館の経営をしたり埼玉県の桂木寺(母念寺)という良く判らない寺の住職になったりしている。有名なS32年の「福田蘭童剽窃事件」では三角以外がサンカを扱うと「盗作」になるという とんでもない猛抗議をしている。つまりサンカ言葉の幾つかは自分が作ったと自分で認めている。更に昭和37年に「山窩社会の研究」で東洋大学から文学博士号を受けている。良く知られた「作務衣もどき」でウメガイを持った姿は この時期のもの。「山窩社会の研究」は論文名だが付録に「福田蘭童剽窃事件」の顛末を資料として延々と引用している。どこまでも食えない人である。奥さんが亡くなった後二号三号が出現した為 版権に支障が出て しばらく復刊しなかったらしい。一代記は面白かろうが、とても書いた内容を全て信じるわけにはいかない。ここらへんは三角の娘である三角寛子著「父・三角寛」に詳しい。或いは平凡社新書「サンカと三角寛」礫川(こいしかわ)全次著に新観点からの記載がある。

追記)後藤興善の「又鬼と山窩」(マタギとサンカ)もオリジナルそのままに復刻され書店で入手出来る。批評社刊ISBN4-8265-0289-3 オリジナルは昭和15年刊であり本書も旧仮名遣いである。三角に胡散臭さを感じる人は必読の書である。3800円也、前述「山窩社会の研究」で引用?した部分が沢山見られる。


トヨクニ剣鉈 土佐鍛造ハンティングナイフ240mm。全長390mm.刃長240mm.重量500g.ブレード青紙二号ダマスカス鍛造磨仕上..ハンドル材樫柄に革巻き.ヒルト=ステンレス.革シース.

トヨクニでは珍しかった皮ケースである。先代が生きておられたうちは何が何でも木鞘と紐だったのが 最近はユーザーの希望に添った商品をネット上から発注できる。カスタムナイフは特に非常に品の有るものが多い。それにつれて価格が上昇気味なのはファンとしては ちょっと辛い。

この剣鉈は実にがっちりしていてスーパー青紙だけあって怖いくらい切れる。ただ研ぐのに固くて難渋する。最近研ぐのに慣れてきたから平気だが 以前だったらバンザイして研ぎ直していただいていたに違いない。それはともかく佐治武士氏のところもそうなのだが これもスウェッジが無い。フォールススウェッジでもない。このデザインなら やはりグイっと抉って欲しかった。

トヨクニ剣鉈 土佐鍛造ハンティングナイフ270mm。全長450mm.刃長270mm(左利き用片刃=珍)重量510g.ブレード材=青紙スーパー鍛造黒磨仕様.ハンドル材=樫.ケース=朴 こちらは些か抉ってあるが凹んでいるだけである。是非スウェッジを付け ファスニングボルトを太くしては如何であろうか。それはさておき切れ味は片刃ゆえ物凄い食いつき方をする。両刃だと逡巡するような枝打ちでも一気にそぎ落とせる。逆に二度打ちするような場合に 食い込んだ刃を抜くのに困るくらいである。ただ「次に買うとすれば大きく刃の重い片刃にしよう」と思わせるパワーが有る。トヨクニのサイトを見て悩んでる人がいたら 是非 これを御奨めする。

マルキン特製両刃剣鉈 240mmダマスカス.全長410mm.刃長240mm.ハンドル材=樫.ブレード材=ダマスカス白紙鋼割込.ヒルト=鉄輪.木鞘、都内のナイフ量販店の雄である「マルキン」が自社ブランドとして販売したもの。これが かなり上質であり ダマスカスも非常に細かく研ぎもし易く値段を考えると大変にお得である。一番使っているのは美濃伝だが次が このナイフである。これは「買い」であろう。

トヨクニ土佐アウトドア剣鉈(ラピタ掲載品)120mm:こだわりの大人の雑誌ラピタ企画「大人の逸品」で制作された通販商品。刃長120mm.全長245mm.刃厚4mm.重量230g.青紙二号両刃.ヒルト=真鍮.樫柄.ちっちゃ過ぎないか?と思われたかも知れないが 実はそうでもない。ベルトに付けておいたままでも邪魔にならず かと言って過度に主張もする事は無い。造りも晶之氏らしく丁寧だし好きな作品である。

トヨクニ ミニ渓流刀75mmダマスカス片刃:75mmダマスカス.片刃。写真が下手なので肉眼で見ると物凄く細かいダマスカス綱なのである。デスクナイフとして重宝している。何よりこの西洋ナイフ(アメリカンポーチ)式のシースが珍しい。和式鍛造では初めて見ました。


盛高鍛冶刃物 蕨手ナイフ

ナイフマガジンで一躍有名になった?熊本県八代市に有る盛高鍛冶刃物の作品である。

刃材:自家鍛接地鉄ダマスカス 青紙二号 全長213mm 刃長110mm共柄 刃巾27mm 刃厚3mm 重量80g

自分では地金が自家鍛接だろうが利器材だろうが、と思っているのだが この蕨手を見ると「流石」としか言い様が無い。薄手の比較的小型ナイフなのだが その見事さは感心するばかりである。佐治武士氏と比較してはいけないのだろうが モノが違う。切れ味そのものも恐ろしく違う。同じサイズで青紙スーパー版も有るが とても研ぎの手に負えなさげなのが気になり こちらにして正解。このダマスカス模様を素人が研いだら台なしにしそうで怖い。蕨手刀というのは古墳時代に蝦夷が馬上から振える刀として作ったものと言われていて日本各地に出土例が有る。柄の部分が輪をかいたように丸くなっているのが「ワラビ」に似ている為「蕨手」の名前が付いた。古墳時代でも一層古い時代の物は北から、新しい物は日本各地に出土し その近辺に「俘囚郷」と言われる場所が有る。要は「ヤマト朝廷」が捕虜にした蝦夷達を拉致し鉄産地に移住させ武器調達の手づるにした名残である。蝦夷の製鉄 作刀技術を横取りするより人間ごと移住させた訳だ。まあ天皇の近侍で犬の鳴き声を真似させられた(吠声=べいせい)隼人達よりはマシなのかも知れない。蝦夷を「えみし」「えぞ」どちらで読むか 現代のアイヌ民族との関係も時代考証も定説も実は無い。古代「蝦夷」は強くて怖いとかいう意味を持っていたらしい(蘇我蝦夷が好例であろう)。蕨手刀は その後「反り」を与えられ「日本刀」へと変化していく。そのモチーフを用いて作られた「蕨手ナイフ」である。遥か古代に思いを馳せながら眺めているのである。


信州打刃物:山刀 熊笹:.伝統工芸師 石田俊雄氏作

ブレイド材白紙多層綱両刃.全長280mm.刃長160mm.刃厚4mm.重量350g.ハンドル=パラコード巻 皮鞘。

写真では敢えて拡大しては写さなかったがグリップ部分とリカッソに当たる部分に大きな「鍛接痕」が有る。写真ではキリオン(ベベルストップの後部)から斜めに二時方向に微かに見えている。一般に言うところの「出来合いの多層綱」と「ハンドル部分の軟鉄」をつないだ痕が丸出しなのだ。別にだから悪いとは言わない。しかし伝統工芸師であるからには そこをパラコードに隠れる部分にズラす事も可能な筈。同じく伝統工芸師を名乗っている方々まで貶める事になる。自分が商う商品に愛着が有れば もう少し考えるだろうと思うのだ。切れ味が悪くなく食い込みも良いだけに何とも残念な仕事である。少なくとも私は二本目は買わないと思う。ネットで購入する場合は手に取って見る事が出来ないだけに怖い。


関 兼常:日本刀作りに適した風土から鎌倉時代より刃物の産地として知られる岐阜県関市。鎌倉時代、大和から移り住んだ刀匠7派の一つで800年近い伝統を誇る。関兼常は代表的ブランド名で同地の北正との共同企画。

美濃伝百錬狩猟刀・両刃.全長360mm.刃長225mm.重量370g.最新カタログ掲載の積層綱版ではなく青紙スーパー版。研ぐのに難渋する位「硬い」。多分晶之師の作品より更に硬い。形状は完全にフルタングの洋式ナイフで、和式には珍しくブレードにはっきりしたベベルストップが有る。和式でリカッソ部分が有るのは珍しい。少し上向きでスウェッジが切られている。ヒルトとリカッソ間は一切隙間が無い。これがナイフの大事なポイントである。出来の悪いナイフは ここに銀鑞が回らず隙間が出来る。バットキャップの無い鍛造蛤刃の洋式ナイフと言える。フルタングは過剰品質で重くなると言われ 洋式ナイフでも最近殆ど見かけない。でも見た目に凄く頑丈そうな印象を与える。実際ここをナロータングにしたからと言ってどれだけ軽量化出来るのだろう。単にバランスの問題かと思う。洋式ナイフは刃材が軽い為 グリップが重いとすぐにバランスが悪くなる。ファスニングボルトは三本有り ちゃんと太く奇麗な研摩が施されている。特筆すべきはシースの出来の良さである。ベルト通しの部分も装着した際ベルトループを避ける様に抉ってあり、口の部分は裏皮を捲り上げる様丁寧な加工が施されている。これと洋式ナイフで車のドアを貫通させるCMを使っている「冷綱」とで貫通比べをしてみたい。恐らく美濃伝が勝つのではないだろうか。「冷綱」のトレールマスターは実勢価格約10万円(グリップの仕様により6万円位から)であるが あれも炭素鋼、買うならこっちである。


美濃伝百錬魔鬼利・両刃・大

日本刀造りに適した風土から鎌倉時代より 刃物の産地として栄えてきた岐阜県関市、今では西洋のゾーリンゲン東洋のセキと言われるほど、世界的名声を得ている。この関にあって、現代の名匠関兼常が 醸し出す威厳と風格、その切れ味の確かさは、匠の傑作を証明しています。今じゃ「北正」ブランドですが。

東北の山地に住み、昔から狩りで生計を立ててきた狩猟民族マタギ。
山を駆け獣を追い仕留める過酷な狩猟活動の中で、マキリと呼ばれる万能刃物がありました。
作刀法は日立安来鋼白紙1号を軟鉄で挟み込み鍛えた古式割込です。
刃は両刃で、刃付けは蛤刃にて太い立木も難なく切り倒す破壊力があります。
全長 約382mm ブレード長 約234mm 刃渡り 約215mm 身厚 約6mm 重量約545g
刃材 日立安来鋼白紙1号 柄材 天然木ブナ材牛ナメシ皮巻 包装 木箱入り
包装重量 約1.1kg 備考欄 革ケース付き

2チャンあたりでは とかく評判が今一つだが、実際手にすると その上質な仕上げに感心します。


Gサカイ・=望泉作=円空鉈斬り

刃材:青紙2号 全長350mm 刃長215mm 刃巾約35mm(先端が少し広い)刃厚5mm 重量260g

洋式ナイフで有名なG・サカイが作った鍛造ナイフ。と言っても刃の部分は四国鍛冶の作で グリップ部分がG・サカイの制作である。よく見ると木鞘に「=望泉作=円空鉈斬り」と刻印されている。和式鍛造刃物だが和洋折衷物の良さが感じられる。上記美濃伝百錬狩猟刀は折衷でも「洋式」寄り、この円空鉈斬りが「和式寄り」かと感じられるのは「木鞘」の為かも知れない。グリップはウッドで微妙なRが有り樫柄よりも握りやすい。刃先が僅かに刃巾が広く、握った時の重心が刃先に寄る。これはナロータング(テーパードタング)になっている所為かと思う。美濃伝百錬狩猟刀がフルタングで些かグリップ寄りに重心が有るため握った感じに違いが出る。比較の為三枚目に並べて撮影したが実寸よりも美濃伝百錬狩猟刀が大柄に見える。重さも相当違うのだが どうしても折衷型同士で比較してみたくなる。仕上げは両者とも互角と言うか高レベルであり これまた冷綱と車ドア刺通比べをしたくなる。鞘も流石に良く出来ていて 水気抜きの穴も ちゃんと底部に開いている。トヨクニ製のブレードでは?という話しだが 私も同じ意見である。刃付け角度がGサカイ製の方が鋭角的である。


秋友嘉彦氏作 ミニ剣鉈 三代目:秋友義彦(昭和19年〜)
15歳の頃より父である二代目義光に師事。20歳で独立し、様々な工法を駆使し、九州全域で絶大な支持を得た「丸ヒツ鉈」の原形を考案。完成された安来鋼のポテンシャルを最大限に生かす鍛造法と熱処理で、信用ある城山ブルを確立。昭和50年、小豆島護国寺への「不動刀」を製作し、奉納。1995年、新たに日本刀と同じ「甲伏せ造り」を独自の製作方法で開発し、現在、通称「本焼き」と呼ばれる製法によって様々な作品を世に送り出している。土佐在住。中学を卒業と同時に二代目義光に師事。昭和39年三代目を襲名独立。四国の刀匠を訪ね歩き甲伏の秘伝を修得。某ナイフショップとのタイアップによる「レッド・オルカ」ブランドで一気に当代人気鍛冶に躍り出た。WEBに華々しい広告を打ち、YaHooオークションとかでは一発商談成立が 概ね7寸物で10万円位してしまう。

元来、日本刀を造る製法のひとつである「甲伏せ造り」。
この伝統の製法を実現するにはより高度な技術と経験が必要とされ、全国でも数えるほどしかその製法に辿りついたものはいない。心金となる極軟鉄に安来鋼を巻く製法であり、叩き上げの時、既に実用が耐えられるかどうかが決まってしまう。幾多の鍛冶屋が挑み、焼入れの失敗を重ね、製品として世に出すまでは十数年の試行錯誤が必要である。鉄と鋼の表情を知り、鋼材と対話が出来る者だけが叶える究極の製法、それが「甲伏せ造り」です。

という解説は「ナイフマガジン」で皆読んだことが有るかと思うのだが。実際使う時にはあんまり違いが判らない。脳内妄想用には良いが10万する7寸とか果たして どんなもんでしょう。この個体はオークションで格安入手したものですが 成程切味は凄いし刃持ちは良いし、研ぎにくいし..............んー難しい。


叉鬼山刀(マタギナガサ) 9.5寸

険しい山を股にかけて猟をする叉鬼(マタギ)が、木の枝をはらったり、獲物の解体や料理に使う万能の山刀(ナガサ)。天然秋田杉の鞘付。秋田県阿仁、マタギのふるさと、マタギ発祥の地でマタギであり、鍛冶師として知られた、西根稔(鍛冶銘西根正剛)氏が従来のマタギが使うナガサに独自の工夫を凝らし改良して造り上げた逸品。ナガサの独特の形は、鉈代わりにもなり、山へ入って藪を払う、切る、裂く、突き刺す等あらゆる働きが出来るまさに万能刀です。飾りではなく、あくまでマタギの道具として、マタギ自身が造り使い続けてきたナイフ、それがナガサです。
■社名:西根打刃物製作所 四代目西根正剛
■規格・容量:9.5寸マタギナガサ
■原材料:天然木、鋼

下に有りますが「袋ナガサ」が滑りやすい為 一般ユース向けにモディファイされた又鬼(マタギ)用のオールパーパスナイフ。剣鉈は大抵「両刃」だが これは「片刃」で独特の裏スキがしてある。これは当代の西根 登(四代目西根正剛)さんの作。先代西根稔さんは平成13年7月12日に永眠なさいました。
専門サイト叉鬼山刀」に詳細が出ています。登氏は先代に分家したやはり同じ阿仁の鍛冶の一家に生まれ、鍛造歴約40年、稔氏より生前唯一ナガサ作りを指導された鍛冶職人と言うことですが 少し違いが有るようです。また この木鞘は私が手を入れ「革バンド」でベルトに下げられるよう改造しています。オリジナルは白い紐で腰に縛ります。柄は樫材で両手で握れるように かなり長めになっています。片刃ですから裏スキが施してあるのですが ナガサ独特のスキ方です。

価格は「ここ」(秋田物産館)が安いですが9寸五分は品切れが多いようです。


叉鬼山刀(フクロナガサ) 9.5寸
険しい山を股にかけて猟をする叉鬼(マタギ)が、木の枝をはらったり、獲物の解体や料理に使う万能の山刀(ナガサ)。8寸まではネットでよく見掛けるが9.5寸は上記「秋田物産館」でないと入手しにくい。
柄の部分が筒状に鍛造された「フクロナガサ」は、熊を仕留める“槍”としても使えるらしい。天然秋田杉の鞘付。
■社名:西根打刃物製作所 四代目西根正剛氏作
■規格・容量:9.5寸フクロナガサ 全長45cm、刃28.5cm
■原材料:鉄、鋼

秋田県阿仁町には独特の戒律を受け継いできた誇り高きマタギの里があります。
マタギ鍛冶、西根登親方を語るには、親方の本家である三代目西根正剛であった西根稔親方を語らなければならない。西根正剛(まさたけ)は又鬼(またぎ・狩猟の民)鍛冶の銘であります。残念ながら西根稔親方は、2001年61才で亡くなりました。
昔からのナガサ(またぎの山刀)は出刃包丁のようで、かなり大きく使いにくいものであったといいます。もう少し軽快に使えるナガサが出来ないものかと考え実行に移した若きマタギが30代の頃の西根稔親方であります。護身用に持ったこのナガサで熊と格闘し、3頭の熊に止めを刺したといいます。実用一点張りのナガサは、現存する古来の日本の刃物として使われている点では、唯一のプロの狩猟道具と言えます。マタギの魂がこの山刀フクロナガサ(柄の部分も金属で筒状になっており、柄に木を差し込んで槍のようにも使える。)に込められています。
侍の魂と同様のマタギの魂、ナガサ。言い換えれば、マタギの誇りを造る唯一の鍛冶であります。14代マタギの松橋頭領によれば、使い始めより何度も研ぎ直して2年目ぐらいからが最高の切れ味が出てくると言う事でありました。西根鍛治は山里であり、ナガサの他にも、様々な技を要求されます。マタギの道具、山の道具、鎌、鍬、ヤスなども有名です。
野鍛冶の仕事全般の刃物を火造ります。従って技の種類や工程は造るものによって大きく異なります。

先代の袋ナガサはタデとして使用中に折れないよう、刃と袋の部分が一直線にならず フクロの部分が長めに刃の方に伸びています。当代のものは この写真のようになっていますので見分けは簡単です。


叉鬼山刀(マタギナガサ)4.5寸

険しい山を股にかけて猟をする叉鬼(マタギ)が、木の枝をはらったり、獲物の解体や料理に 使う万能の山刀(ナガサ)。天然秋田杉の鞘付。

■社名:西根打刃物製作所 四代目西根正剛氏作
■規格・容量:4.5寸マタギナガサ
■原材料:天然木、鋼 全長250mm、刃渡り135mm、身厚4mm、幅42mm、重さ185g、鞘を含めた重さ280g、安来鋼青紙+軟鉄、木鞘(杉)

4.5寸袋ナガサのデザインは、有名カスタムナイフビルダーの相田義人氏のアドバイスでデザインされており 他のサイズのナガサと違い、やや薄め、鋭角なは付けになっていますので、ナイフ的な使い方に向いています。 下手な洋式ナイフなんぞ使うよりキャンプサイトで持つなら こいつ。どうも日本人は片刃のナイフが使いやすく感じるようです。こいつも紐で腰に下げる様になっていましたが、みっともないし使いにくいし、で改造してあります。


伊勢屋・火造剣鉈 黒マグマ

伊勢屋とは100年来のSETOカトラリーの屋号である。

●刃材:全鋼・両刃●柄材:青光樫、黒うるし●鞘:ウッド●刃長:210mm●全長:365mm
●1908年の創業、金属一筋100年の伊勢屋から伝統的手法による和物火造鉈が開発されました。ブレードは切れ味鋭いハガネ材、ハンドルは青光樫の黒うるし塗り。鞘は木製でベルト付きのしっかりしたつくりで安心です。という言葉を信じて(^.^)購入してみた。怖いもの見たさというのが本当のところ。なんせ剣鉈が1万円以下で買えるのだ。で届いた物を見て「あ、成程」という感想である。それ以上でもそれ以下でもない。何とものっぺりした利器材そのままの黒い地肌。黒漆と記載があるが どう見ても「黒オイルステイン仕様」に見える表面。これなら多少乱暴に扱っても気にならないと思い、庭の木のヒコバエを片っ端から叩き切ったが案外(失礼)びくともしない。火造りは しっかりしているのかもしれない。写真だと晶之作にも似ているが多分気のせいかも知れない?入門用には安価でベストだと思う。現在多層綱ブレードのものが12800円である。使い倒すならオススメでしょう。


Smith&Wesson Homeland SECURITY Tanto

刃材:440Cチタニウム 全長298mm 刃長140mm 刃巾35mm 刃厚7mm 重量430g(シース無)ハンドルG10

剣鉈の頁に洋式ナイフを入れるには かなり抵抗が有るが この刃厚と重量を見れば納得出来るのではないだろうか?重さや形状(タントーブレードという)を見ても日本を意識した造りに見える。とにかく重たいフルタングである。刃厚7mmというのは そこらの剣鉈より分厚く やたら頑丈である。made in Chinaであるから切れ味は保証の限りに有らず、見てくれのオッカナさにこそ存在意義が有る。もっとも最近は人件費の安さのみならず熱処理もバカにならない出来栄えである。ランボーナイフのような単なるミテクレと違い 余計なサバイバルキットなんぞは付属しない。しかし この刃物にセキュリティ?どういうシチュエーションでなのか判らない。何れにせよ押し入った泥棒と闘うには向いているかと思う。感心したのはシースである。がっちりした合成樹脂製のインナーが有り 格納すると逆さにして振っても本体をホールドしている。またこのシースはベルトに直角にも平行にも装着出来る。簡単なタッチアップ用砥石もセットされており中々御奨めの一品である。これでブレードが和式鍛造だったらなあーとつくづく思う。


コールドスチール マスターハンター 

ここに「剣鉈」扱いするのは どうかと思うが許されたい。

プレーン 4.5インチブレード シース付き カーボンV 実用性、耐久性、強度いずれも高いレベルを実現しているらしい。しかも、切れ味などの繊細さも身に付けているそうだ。コストパフォーマンスも良く(特売だと一万ちょっと)、万能ナイフとして1本持ちたい。ただカーボンVは「錆びる」事をお忘れなきよう。早い話「炭素鋼」だからである。最近Sanmaiとか威張って数万円なんて値段で売ってるが「利器材」じゃん。日本じゃ「鉈」。

MASTER HUNTER 全長:240mm 刃長:11.5mm 身厚:5.0mm 重量:175g ブレード材質:カーボンV ハンドル材質:クレイトン 価格:14500円
 マスター・ハンターの厚く巾広い刀身は、鋭い切断能力を持つ。また、炭素鋼利器材なので簡単にシャープニングでき、扱いやすい。深く格子縞模様のクレイトンハンドルは、樫材よりは疲労感が少なく長い使用に適します。狩猟・紛争輸出国家・犯罪大国であるアメリカでのフィールドでマッチングされ、アフリカ、オーストラリア、アラスカおよびコロラドなどのフィールドでテストされた。そして、ハンターたちに賞賛されているそうですが、欠点はシースに入れにくく出しにくい。水抜き穴が無いからサビを誘発するっていうのが目立ちます。個人的には小型の剣鉈のほうが使いやすいです。


「ランボー2」「ランボー3」だけなら兎も角「ランボー3のパチ物」である。

これまた ここに掲載するのは間(場)違いなのだが 大きさから「だけ」で 隅っこに掲載する。誰もが御存知。映画「ランボー」でスタローンが振り回していたナイフをユナイテッド社がライセンス生産したモノである。見た目立派だが 間違っても振り回したり 木に叩き付けたりしてはならない。グリップから折れるし 鋸刃は磨り減るだけである。Type-3の方は 一応そこそこ頑丈だが 何も こんな大柄でなくても、と。一枚目と二枚目の下側が正式ライセンスのユナイテッド社の「ランボー3」上が仏蘭西のメーカーが造った「ランボーイ・ナイフ」である。実は「トヨクニ」で扱った物で 存外仕上げと言い刃材といい優れ物で ライセンス品より造りも重さも また完全なフルタングという点も吉。ちなみに「2」が全長:39cm「3」が40.5センチ有る。

三枚目は下側がユナイテッドの正規品ランボー2、皆「サバイバル・ナイフ」というと こいつを想像するという物。四枚目はランボー3の正規品で6と7枚目が「ランボーイ・ナイフ」。

何となくコレクターである以上 持ってないといけないかと思い 随分前に購入しているが 全然使ってない。こんな馬鹿デカイ物どこで使うんだ?それにチューブ・ハンドルは「折れる」しな。そういえば最近ランボーType-1を見かけなくなった。


Dhankute Wooden=ダンコテ(ネパール)製本物のグルカククリ。全長400mm.刃長260mm.重量460g.ケース素材はローズウッドに象嵌。ブレード素材はスプリングスチール。ハンドルはローズウッド。

これぞ本物のネパール産のゴルカククリ(グルカでなくゴルカだそうです)シースから抜くだけで一苦労。しまうと反動でシースに入れてある二本の小ナイフが飛び出す。まして これどうやってベルトに下げるんだろう?裏側には真鍮製のひ弱そうな金具が有るだけで とてもこの固い抜き差しに耐えられそうもない。多分何かと付け替えるんだろうなあ。スプリングスチール製というと気になるが「元JEEPの板ばね」かもしれない。でも明らかに違うのは和式ククリと比べての重量バランスで 本物はもっとトップヘビーである。またグリップが細いので もっと先端に破壊的なパワーが集中する。刃は日本では考えられないくらい峰が太く、前から見ると二等辺三角形をしている。現在日本に輸入されているククリは大抵インド産かタイ産のパチ物である。是非ネパール産のものを買うべきだと思ってます。ネパールバザールドットコムが良心的価格で良かったのですが秋まで休みだそうで時々チェックしといた方が良いですよ。他にもシンギングボールやタンカや曼荼羅など精神世界系商品も多かったです。